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脱・どんぶり勘定の人材育成。中小企業が「データドリブンHR」で生産性を最大化する具体策

2025年8月18日

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〜勘と経験の人事から、データで語る戦略人事へ。
 企業の成長を加速させるタレントマネジメントの新常識〜

「うちのエンジニアの本当の実力、正しく把握できていますか?」という問い

「Aさんは技術力は高いが、マネジメントは未知数だ」

「新規プロジェクトに、誰をアサインするのが最適だろうか…」

「若手のB君、最近モチベーションが低そうだが、原因がわからない」

経営者や事業部長の皆様は、日々このような人材に関する意思決定に迫られているのではないでしょうか。多くの場合、その判断は個人の経験や勘、あるいは年に一度更新されるかどうかのExcelスキルシートに頼らざるを得ないのが実情かもしれません。

しかし、人口減少が進み、IT人材の獲得競争が激化する現代において、人材という最も重要な経営資源を「どんぶり勘定」で管理し続けることのリスクは、日に日に高まっています。

本記事では、勘や経験に頼った属人的な人事から脱却し、客観的なデータに基づいて人材の価値を最大化する「データドリブンHR」について、中小企業が取り組むべき具体的なステップを解説します。

なぜ今、「データドリブンHR」が中小企業の成長に不可欠なのか?

「データドリブン」と聞くと、大企業の手法だと思われるかもしれません。しかし、リソースが限られている中小企業にこそ、データに基づいた精度の高い人材戦略が不可欠です。その背景には、無視できない2つの大きな潮流があります。

1. 深刻化するIT人材不足
経済産業省の調査では、IT人材の需給ギャップは今後ますます拡大し、2030年には最大で約79万人が不足すると試算されています。これは、「採用」だけで問題を解決するのが、もはや不可能であることを示唆しています。限られた人材の生産性をいかに高め、定着してもらうかが、企業の成長を左右します。

2. 「人的資本経営」への要請
近年、企業が持つ人材を「コスト」ではなく、価値創造の源泉となる「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出す「人的資本経営」が世界的なスタンダードになりつつあります。日本でも、上場企業を中心に人的資本に関する情報開示が義務化されるなど、「人材への投資効果を説明する責任」が企業に求められる時代になっています。これは、中小企業にとっても決して無関係な話ではありません。

データドリブンHRとは、こうした時代の要請に応え、感覚論ではなく客観的なデータに基づいて人材戦略を立案・実行し、企業の持続的な成長を実現するための羅針盤なのです。

データが人材の成長を導く

勘と経験に頼る人事の限界。
Excel管理が引き起こす3つの経営損失

「うちはExcelで十分管理できている」という声も聞こえてきそうですが、本当にそうでしょうか。実は、Excelによる属人的なスキル管理は、気づかぬうちに深刻な経営損失を引き起こしています。

損失1:機会損失(誤った人員配置)
データが古かったり、粒度が粗かったりすることで、「本当は適任な人材がいるのに見つけられない」「エース級の人材にばかり負荷が集中し、若手が育たない」といった事態が発生します。これは、プロジェクトのパフォーマンス低下や、将来のリーダー育成の機会を失うことに直結します。

損失2:離職コストの増大
社員が「正当に評価されていない」「成長できる環境がない」と感じた時、離職のリスクは高まります。一人の社員が離職した場合の損失は、採用コストや後任者の育成コストを含め、年収の50%〜150%とも言われます。データに基づかない評価や配置は、静かにキャッシュアウトを引き起こしているのです。

損失3:管理工数の浪費
人事担当者や管理職が、Excelシートの更新や集計、面談調整のメール連絡といった作業に費やす時間は膨大です。その時間は、本来もっと戦略的な業務や、社員との1on1といった対話に使うべきではないでしょうか。この「見えないコスト」が、組織全体の生産性を蝕んでいます。

絡まったExcelシートと整理されたダッシュボードの対比

 

ステップ1:「スキル」を客観的データに変える。
iCDとタスクプロフィールという武器

データドリブンHRの第一歩は、社員一人ひとりのスキルという「目に見えない資産」を、客観的で比較可能な「データ」に変換することです。

ここで強力な武器となるのが、IPA(情報処理推進機構)が提供する日本の公式スキル標準「iCD(i Competency Dictionary)」です。iCDは、IT人材に求められるタスク(業務)とスキルを網羅的に整理した辞書であり、これに照らし合わせることで、自社のエンジニアが持つスキルを客観的なモノサシで測ることができます。

とはいえ、本格的な導入は大変です。そこで、まずはiCDの簡易診断版とも言える「タスクプロフィール」から始めるのが現実的です。現場のエンジニアが自身の業務経験をチェックするだけで、スキルレベルを手軽に、かつ低負担でデータ化できます。

これにより、「誰が、何を、どのレベルでできるのか」という、あらゆる人材戦略の基礎となるデータベースを構築できるのです。

 

ステップ2:「成長」をデータで後押しする。
効果的な目標管理と1on1の実現

スキルがデータ化できたら、次のステップはそのデータを活用して「成長」を加速することです。

データ化されたスキルマップを元に、上司と部下が「現在のスキルセット」と「目指すキャリアパス」を客観的に見ながら、次の半期や一年で何をすべきか、具体的な目標を設定します。

  • 「このプロジェクトを完遂するには、◯◯◯のスキルレベルを3から4に上げる必要があるね」
  • 「将来リーダーを目指すなら、次は△△のタスクに挑戦してみよう」

このようなデータに基づいた対話は、目標設定の納得感を高め、社員のモチベーションを引き出します。さらに、目標管理システムを導入すれば、進捗の確認や定期的な1on1の記録もデータとして蓄積され、育成のプロセスそのものを可視化できます。これにより、管理職ごとの育成スキルのバラつきを防ぎ、組織全体としての人材育成力を底上げすることが可能になります。

<h2″> 「個」への投資が、最強のROIを生む。TrueColorsが描く、企業と個人の新しい関係

ここまで解説してきた「スキルのデータ化」と「データに基づく成長支援」を、中小企業が無理なく導入できるよう設計されたのが、タレントマネジメントシステム「TrueColors」です。

TrueColorsは、iCD準拠のタスクプロフィールによるスキル診断から、オンラインでの目標管理制度の運用までをワンストップで実現します。Excel管理の煩雑な工数を削減し、データに基づいた戦略的な人材育成・配置に集中できる環境を提供します。

しかし、TrueColorsの思想の根幹にあるのは、単なる業務効率化ではありません。それは、「個人への投資こそが、最高の投資対効果(ROI)を生む」という考え方です。

その象徴が、競合にはない「スキルポータビリティ」という機能です。TrueColorsに蓄積されたスキルデータは、社員が退職した後も個人の資産として持ち運び、次のキャリアで活用できます。

「会社が、自分の市場価値を高めるための投資を支援してくれる」

この信頼関係こそが、社員のエンゲージメントを極限まで高め、結果として離職率の低下と生産性の向上という、最高のROIとなって企業に還ってくるのです。この思想は、長年ITソリューション(受託開発)事業で多くのエンジニアと向き合ってきた私たちだからこそ辿り着いた結論です。

 

まとめ:データに基づいた人材戦略で、持続可能な成長を

勘と経験に頼った人材育成は、もはや現代の経営環境では通用しません。社員一人ひとりのスキルと成長をデータで正確に捉え、戦略的な投資を行うこと。それこそが、中小企業がこれからの時代を勝ち抜き、持続可能な成長を遂げるための唯一の道です。

「どんぶり勘定」の人事から、データで語る戦略人事へ。
その第一歩を、TrueColorsと共に踏み出しませんか?

この記事を書いた人

佐々木 努

執行役員CTO
人材開発室 室長
一般社団法人 iCD協会 活用支援委員会メンバー