ITコラム 初級編

i コンピテンシ ディクショナリとは?仕組みと導入効果

2022年9月29日

目次Category


ITエンジニアのスキルを標準化する『i コンピテンシ ディクショナリ』を導入する企業が増えています。
どんなスキルを図ることができ、利活用できるのでしょうか。

今回はこの『i コンピテンシ ディクショナリ』について解説していきます。

i コンピテンシ ディクショナリとは?

2015年に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が『i コンピテンシ ディクショナリ』(以下iCDと表記)の提供をスタートしました。指標としてグローバル基準となっていることが特徴です。
IT企業のみならず、様々な業種・業界の企業が幅広くiCDの導入を開始しています。

ITスキル標準化とは?

個人のIT関連能力を職種や専門分野ごとに明確化・体系化し、IT人材に必要なスキルやキャリアを示した指標。いわば、ITスキルを図る『ものさし』です。

ITスキル標準化を取り入れる重要性として、元来抽象的だったこれまでの経験スキルや知識、現在の保有するスキルレベルを診断し、それらを明確化・体系化することです。

一つの『ものさし』で視覚化することで、個人や組織全体のスキルアップを図ることを可能とします。

二つの『ディクショナリ』(辞書)とは?

iCDは、『タスクディクショナリ』と『スキルディクショナリ』で構成され、この二つの辞書で診断します。

(図1)

  • 『タスクディクショナリ』では、会社全体の組織や個人の『機能』『役割』を診断します。

会社は自社の課題や今後の展望などを明確にし、それらを会社全体で取り組まなければいけません。
そこで機能や役割を可視化することにより、根拠のある事業計画を定め、推進する事が可能となります。

(図2)  (図3)

  • 『スキルディクショナリ』では、業務を支えるスキルや知識を診断します。

    日々の業務をするうえで、どんな知識を身に着け、業務に活かせるのかを理解することができ、業務の効率化や生産性向上を可能とします。
  • 自分の得意分野を見つけたり、その得意分野をどのように業務に活かすことができるかを考えるきっかけとしても有効です。

(図4)

(図5)

これらのタスクディクショナリとスキルディクショナリは、合計するとiCD診断項目が約20,000点以上にも及びます。そのためエンジニアのみならず、セールス(営業)や総務などの事務職にも幅広く活用できる指標として広がりを見せています。

個人スキルの可視化

個人でiCDを活用する場合、診断結果から、どのようなヒントを得ることができるのでしょうか。
一度診断して終わりではなく、この結果から多くの情報を取得し定期的に診断することで、新たな自分と都度向き合う事が可能です。

スキル能力把握と自己分析が可能

勉強したから、この業務は出来ると思っていたけど、実際に実務で挑戦してみると『予想とは違い、出来なかった』という経験はありませんか?
自分の中でのイメージ(予想)とリアル(現実)の差は、実際に実務を行った時に気づくことが多いのが現状です。

しかしながら、日々の業務の中で、

●自分が保有している今のスキルはどのくらいなのか
●経験スキルはどんな業務に活かせるのか

…など、このように自己分析をすることは難しいですよね。
そこで、自分のスキルレベルや知識をiCDで診断し可視化するのです。

もしかしたら、これまで自分でも知らなかった能力に出会うきっかけになるかもしれません。
逆に自分の弱点に気づき、その改善策を見出すことができるかもしれません。

自分の経験やスキルを最大限に活かすためにも、自分の出来る・出来ないを明確にし、自信を持って自己成長へ繋げることが重要となります。

今後のキャリア形成と将来設計を立てるヒントへ

リーダー・マネージャー・管理職などのキャリアアップを目指す時、スキルアップを目指す時、転職をして新たな職種へジョブチェンジする時。

要は自身のキャリアプランの設計において、今保有している知識や経験の他にどんなスキルを身に着けてたら良いのかが抽象的で分からないという事が多々あります。

更には、各企業における『ものさし』が統一されていないことで、転職時にこれまでの経験スキルをベースとした次のステップからのスタートではなく、すでに学んだことが重複されるように…イチから研修・教育等を再度受けるというケースも多くあります。

これらを考えた時に、必要なスキルや業務役割など細かいタスクを明確に把握あるいは提示できれば、効率良く将来設計を立てやすくなるでしょう。

闇雲に将来に向かうよりも、明確化することで、あなたの思い描く将来像に最短距離で向かう事ができます。
具体的にはどのような資格取得が必要なのか、どのような学びが必要なのか、どういった経験が必要なのかが分かります。

理解したうえで目標に進んでいくほうが効率的、かつ確実にキャリアップやスキルアップに繋がります。
あなた自身のモチベーションを保ちながら、今後の目標に向かって突き進む事が可能です。

企業や組織のスキル可視化

時代の流れと共にビジネスや技術も次々と新しいものが生まれ、私たちは世の中の変化に合わせた柔軟な対応が求められます。iCDを活用することで、ビジネス目標達成と企業成長に向けた大きな効果が期待できます。

自社の課題の見直しと組織戦略を視える化

自社の課題は把握しているものの、どのような対策を行えば良いのか分からず、実際は手つかずになっているという企業は多くあります。

個人だけではなく組織の経験やスキルもiCDを活用することで、組織全体の課題を浮き彫りにします。
それにより、どんなスキルを持った人材が必要なのかを現状と目標で照らし合わせることで、機能と役割を修正することができます。
さらには、足りない所を見付け、どのように補っていくのかを見直す事も可能とします。

組織戦略としても、視覚化することで『自社のあるべき姿』を見据え、組織目標を立案し実行に移すカギとなるのです。

自社の強みだけではなく、課題解決に向けて取り組むことも大切です。
iCDを導入することで自社の課題解決へのヒントを見つけ出し、会社全体で成長できる仕組み作りを目指します。

人事考課制度で目標設定が可能

時代の流れと共にビジネスも時代に合わせた変革が求められている中、会社としても常に進化し続けなければいけません。

進化し続けていくうえで、社員の成長は必要不可欠。
そのためにはまず、社員が成長できる仕組み作りが重要となります。

仕組みの一つとして挙げられる、社員一人ひとりを公平に客観的に判断しなければならない人事考課制度。
『ものさし』がないまま実際の業務だけを見て、出来る・出来ないと主観的に判断することは、評価制度としても公平な評価とは言い切れません。

そこで、iCDを活用し社員各々のスキルレベルを数値化することで、適格なアドバイスや指導が可能となり、双方が納得したうえで今後の目標を一緒に考える事ができます。

会社にとっても、社員一人一人とコミュニケーションを図り、個々の経験スキルや目標を把握する事で、今後のビジネス展開にも『どんなスキルを持った社員が必要なのか』等、明確にすることができるため、組織最適化に繋がります。

人事考課制度の観点でもiCDを導入し、定期的に診断することが重要となります。

まとめ

iCDは経験やスキルを図る、いわば『ものさし』です。

IT業界のみならず様々な職種・業種に対応し、自社に合わせて必要なタスクを取捨選択することが出来ます。

多角的な視点から視える化することで会社全体と個々のスキルアップを明確化させ、共に成長し続ける仕組み作りを目指します。

近年DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進み、DX人材の不足も加速し、DX人材に合わせた採用活動と人材育成が重要となっています。こうした問題にもiCDを活用することで、現状の把握や判断する際、有効な情報を取得し、新たな施策へ実行できます。様々な視点から、個人のスキルアップやキャリアアップ、企業成長を実現するためのヒントをiCDで見つけてみてはいかがでしょうか。

(図1)~(図5) : 画像引用元 IPA iCD2017ポケットハンドブック https://www.ipa.go.jp/files/000060885.pdfより

 

この記事を書いた人

ITコラム部YAZ

YAZ ITコラム部

IT業界や専門用語について、分かりやすさを意識して情報発信しています!
弊社に興味がございましたらお気軽にご連絡くださいませ。☞詳しくはコチラ