シンギュラリティ
ITコラム 初級編

シンギュラリティとは?用語の意味と到来の時期、社会への影響と事例

2022年7月22日

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新たなテクノロジーの登場により、人々の生活はますます便利になり、今なお暮らしぶりが変化しつつある状況です。IoTに代表されるように、情報技術は生活の身近な存在となりました。さらなる技術の進歩によって、人間社会はどのような未来を迎えることになるのでしょうか。そんな近い将来を想像するうえで、押さえておきたいのが「シンギュラリティ」の概念です。

ここでは、シンギュラリティの意味や、到来するといわれる時期をご紹介します。また、シンギュラリティ到来によって社会にもたらされる影響や、AIが人間の能力を超えた事例もお伝えするため、ぜひ参考にお読みください。

シンギュラリティとは?

過去の時代、人類は技術を大きく進歩させて数々のイノベーションを起こし、現代文明のレベルに至るまで社会を発展させました。しかし、こうした技術の進歩によって、いずれ人工知能が人類の知能を超えるとも予想されています。初めに、シンギュラリティの意味や、問題点について解説します。

シンギュラリティの意味

シンギュラリティ(Singularity)とは、人工知能(AI)が人間の知能を超える「技術的特異点」および、社会変革が社会や人々の暮らしに与える影響の総称です。本来のSingularityは、数学・物理学における「特異点」を意味する言葉でした。近年では人工知能ブームなどを背景に、テクノロジーの進歩とシンギュラリティへの関心が高まりつつあります。

シンギュラリティの概念は、1993年にアメリカの数学者ヴァーナー・ヴィンジ氏の著作にて提唱されました。後に、人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル博士が、シンギュラリティの考え方を広めることになります。なお、両者が唱えたシンギュラリティの説については、以降の見出しで具体的に解説します。

シンギュラリティに関しては専門家によって見解が異なる部分もありますが、テクノロジーの進化により将来的にコンピューターが「超知能」を得ると考えられています。超知能とは、天才的な人間をはるかに上回る知能を有する、仮説上の主体のことです。社会に甚大な影響を与える可能性があるとして、シンギュラリティの問題点についても議論がなされています。

シンギュラリティの問題点

シンギュラリティに関する問題点として、AIの超知能が社会にどういった影響を与えるのか、現状では十分に把握できないことが懸念されています。超知能を持つAIが、人間の開発するAIよりもさらに優れたAIを生み出す可能性があるためです。このような事態になれば、人間側ではAIの思考や回答を予測できなくなるおそれがあります。テクノロジーの進歩によるメリットが期待される一方で、こうしたAIを人間が制御できなくなれば、人類の脅威となるリスクがあると考えられています。

シンギュラリティが到来する時期とは?

シンギュラリティが到来する時期については、専門家によって見解が分かれやすく、さまざまな説が存在します。なかには、シンギュラリティの到来を否定する意見も少なくありません。ここでは、代表的な主張を取り上げ、それぞれの概要をご紹介します。

ヴァーナー・ヴィンジ論

アメリカの数学者でありSF作家でもあるヴァーナー・ヴィンジによる説です。彼が自身の著作で概念を提唱した1993年の時点で、30年以内にはシンギュラリティが到来すると述べられています。ヴァーナー・ヴィンジが考えたシンギュラリティによる社会変革には、悲観的な内容も含まれています。たとえば、人類はテクノロジーと生命が融合した「サイバネティック生物(=サイボーグ)」になると指摘。さらには技術進化が加速し、人間が理解できない領域にまで到達すると考えられています。

レイ・カーツワイル論

アメリカの発明家であり、実業家や未来学者でもあるレイ・カーツワイルによる説です。かつて半導体メーカー「インテル」の創設者のひとりゴードン・ムーアが「半導体の集積率は18ヶ月から24ヶ月で2倍になる」という「ムーアの法則」を提唱。レイ・カーツワイルは同様にして科学技術も指数関数的に進歩するという内容の「収穫加速の法則」を提唱。レイ・カーツワイルの考えでは、シンギュラリティは2045年に到来するとされています。この主張から、シンギュラリティがもたらす社会問題が「2045年問題」と呼ばれるようになりました。レイ・カーツワイルは過去に、検索エンジンが登場することや、コンピューターがチェスで人間の世界王者に勝つことを言い当てた人物としても有名です。近い未来に、情報技術の分野だけでなく医療分野も指数関数的な進化を遂げ、2030年には人間の脳機能や身体機能が拡張されると予測しています。

シンギュラリティ非到来論

研究者の中には、シンギュラリティは即座には起こらないと考える人も存在します。たとえば、アメリカのコンピューター科学者であるジェリー・カプランは、2018年の講義において、シンギュラリティはすぐには訪れないと指摘しました。人工知能は人間ではないため、「人間とは同じように考えない」「ロボットには独立した目標および欲求がない」という考えから、シンギュラリティ到来を否定しています。人工知能がもたらす未来は明るいとして、より良い世界を作るために考える必要性を述べました。ただし、人工知能が社会に与える予期せぬ作用に対しては、規制が重要であるとも提言しています。

シンギュラリティが社会にもたらす影響

もしもシンギュラリティが到来したら、私たちの社会にはどのような影響がもたらされるのでしょうか。その頃には、これまでの生活様式や雇用などに大きな変化が生じて、現在とは違う形の社会となっているかもしれません。現状考えられているシンギュラリティの影響についてご紹介します。

モノの価値が変わる

シンギュラリティが到来すると、モノの値段が下がり、大規模なデフレが起こると予想されています。その背景として挙げられるのは、超知能を持つAIによりあらゆる業務のオートメーション化が加速し、人が現場にいなくてもモノを製造できるようになるという考え方です。モノの価値が大きく変わることで、経済にも劇的な変化がもたらされ、従来とは異なる社会保障制度が必要となる可能性があります。

人間が行う仕事の内容が変わる

現時点で一部の仕事がAIに代替され始めているように、シンギュラリティが到来すると、人間の従事する仕事が変わると考えられています。シンギュラリティ到来後も残ると考えられているのは、クリエイティブ職のほか、人の命にかかわる医療系の職業、ハイレベルの接客が求められる職業全般です。一方で、事務仕事などの単純作業を筆頭に、専門知識が求められる職業も、AIに代替される可能性があります。

AIが人間を超えたシンギュラリティの事例

実は、すでに人工知能を搭載した機械が人類の能力を超えて、現実にシンギュラリティが起こったとされる分野もあります。今はまだ限られた分野のみに留まりますが、今後はさらに別の分野でも、同様の事例が増えるかもしれません。最後に、現状のシンギュラリティの事例をご紹介します。

AIがチェスのチャンピオンに勝利

1997年、IBM社が開発したチェス専用スーパーコンピューター「Deep Blue(ディープブルー)」が、世界チャンピオンのガルリ・カスパロフに勝利しました。チェスの世界ではDeep Blue以前にも、大学の研究室で開発された「Deep Thought(ディープソート)」が、1980年代後半にグランドマスターに勝利した経緯があります。

AIがクイズ王に勝利

2011年、IBM社が開発した質問応答システムの「Watson(ワトソン)」がクイズ番組に出演し、人間のクイズ王との対決に勝利しました。WatsonにはNPLと呼ばれる自然言語処理がプログラムされています。番組に出演した際、人間の自然言語を理解し、非構造化データの中から効率的に適切な回答を導き出したことが注目されました。Watsonは、本にして100万冊以上にもなる膨大な量の情報を保存できます。昨今ビジネス領域でも活用されているビックデータの原型ともいえる事例です。

AIがプロ棋士に勝利

2017年、DeepMind社が開発した囲碁AIの「AlphaGo(アルファ碁)」が中国のトップ棋士に勝利しました。囲碁はルールが複雑で、かつてはAIが人間に勝つのは困難であると考えられていたゲームの一つです。そのため、AlphaGoの勝利は世界的なインパクトを与える出来事となりました。なお、将棋の世界では、プログラマーの山本一成を中心に開発された将棋AIの「ponanza(ポナンザ)」が、2013年に初めて現役のプロ棋士に勝利しています。将棋の場合も、かつてはAIがトップレベルの棋士に勝つのは難しいと考えられていましたが、技術の急速な発達により、早い段階で実現されることとなりました。背景にはディープラーニングや機械学習を大量に行った結果、AIが加速度的な成長を遂げたことにあると見られます。

シンギュラリティで注目されるAIをビジネス領域で活用するには?

今回は、シンギュラリティの基礎知識や社会にもたらす影響、人間の能力を超えた世界的な事例までお伝えしました。
人工知能(AI)をはじめとした情報技術の進歩のスピードはめざましく、今日でもAIを搭載した新たなシステムが次々と開発されています。

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この記事を書いた人

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