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AIエージェントとは、作業を進めるうえで必要な情報を自ら収集・判断しながら、さまざまな作業をこなす新しいAI技術を指します。これまでのAIと比べて、より深い考え方が可能で、必要なときには外部のデータやサービスにもアクセスできます。
つまり、これまでのAI(人工知能)のようにただ決まった作業をこなすだけでなく、自分で判断しながら最適な行動を選び、自分で考えて業務を遂行していくのが大きな特徴です。
最近話題の生成AI(例えば文章や画像を作るAI)とは少し異なります。生成AIは「特定の出力物」を作成することに特化していますが、AIエージェントは「行動を選びながら、一連のタスクを継続的に進める」ことができます。
この違いをしっかり理解することで、企業が抱える課題を解決するヒントが見えてくるでしょう。
AIエージェントとは

まずはAIエージェントの定義と、AI全般とどのように異なるのかを整理しましょう。
AIエージェントとは、周囲の状況をモニタリングしながら自分で判断し、タスクを自分で考えて実行できるソフトウェアシステムを指します。その名前は、まるで人間の「エージェント(代理人)」のように、特定の目的のために自分で考えて行動し、継続的に働く存在であることに由来しています。
一般的なAIが単一の計算や予測、対話生成に特化する一方で、AIエージェントは複数のタスクを同時に、かつ連続して遂行できる点が特徴です。
外部サービス(他のアプリやシステム)の利用や、状況に応じた新しい情報である外部データの学習を踏まえつつ、目標達成のために適応し、柔軟に自分の行動を変化させることが可能です。
AIとAIエージェントの違い
AIには機械学習やディープラーニングなど多様なアプローチが含まれますが、AIエージェントはこれらの技術を組み合わせ、インターネット上のリアルタイムの情報やユーザーからのフィードバックなどの外部環境との絶え間ない相互作用を重視します。
一般的なAIは一度に特定のタスクを処理して完了するケースが多いのに対し、AIエージェントはタスクを継続的にこなし、必要に応じて状況や目標を再評価しながら行動を更新する点で大きく差別化されています。
AIエージェントと生成AIとの違い
多くの場面で比較される生成AIとは、どのような点で異なるのでしょうか。
生成AIはコンテンツ作成など「静的な出力」に強みがありますが、AIエージェントは「複雑なタスクを自分で考えて管理し、実行する能力」に特化しています。生成AIはユーザーからの入力があって初めて回答を生成することが多いのに対し、AIエージェントは自ら目的を設定し、連続的に判断と行動を繰り返す点が大きく異なります。
また、AIエージェントはシステムが動作する周辺状況(例えば、センサーからのデータ、他のソフトウェアの動作状況、ユーザーからの指示など)といった外部環境の情報や外部データを活用し、必要に応じて自身のモデルや行動を更新するプロセスを備えています。
生成AIは大量の学習データをもとに応答を作成するものの、外部環境とのリアルタイムなやり取りは限られている場合が多いです。結果的に生成AIは出力の質が高くても、タスク全体のマネジメントは別の仕組みに任せられる傾向があります。
AIエージェントのワークフロー

AIエージェントが与えられたタスクをどのように理解して計画を立て、実際に実行していくのか、一連のワークフローを見ていきましょう。
AIエージェントはまず、与えられた「目的」を把握します。次に、その目的を達成するためにどんなステップが必要か、どんな情報が必要か、そしてどんなツールを使えば良いかを考え、行動計画を立てます。
この際、現在の状況や利用できるデータなどを総合的に判断し、最適な方法を検討しながら計画を立てていきます。もし途中で状況が変わっても、その変化に合わせて計画を柔軟に修正し、実行できる点がこれまでのAIとの大きな違いです。
さらに、計画を実行する際には、インターネット上の情報や会社のデータベースなど、必要なデータを外部から収集したり、特定の分析ツールのように、適切なツールを自分で選択して活用したりします。行動した結果をすぐに次の判断に活かすことで、より正確に、より最適な方法でタスクを進めていくことがAIエージェントの強みです。
ステップ1:目標の初期化と計画立案
AIエージェントはタスクやゴールを受け取ると、まず目的を明確化し、実現のための行動プランを生成します。具体的には、どのテータソースを使用するか、どの機能や演算が必要かを整理したうえで、最適な順序を決定します。目的に至るルートが複数ある場合は、効率やリソース使用量などの要素も同時に検討します。
ステップ2:外部ツールや情報の活用
近年のAIエージェントは、「Function Calling(ファンクション・コーリング)」と呼ばれる技術などを用いることで、まるで人間が専門ツールを使うように、外部の機能やサービスを自分で考えて呼び出し、利用できるようになりました。
例えば、データベースから必要なデータを検索したり、特定の分析ツールを使って複雑な計算を実行したり、といった専門的な作業もAIエージェント自身が行うことが可能です。これにより、AIエージェントはより幅広い種類のタスクに対応できるようになっています。
ステップ3:推論と実行の繰り返しによる最適化
AIエージェントは、ReAct(リアクト)やReWOO(リーウー)といった代表的なフレームワーク(考え方)をもとにして、人間が思考しながら行動するように、タスクの途中結果を順を追って確認し、その都度、最適な行動を選びながら前進します。
これは、以下のようなサイクルを繰り返すことで実現されます。
- 思考(Reasoning):現在の状況と目標から、次に何をすべきかを論理的に推論します。
- 行動(Action):推論にもとづいて、外部ツールの利用やデータの収集など、具体的な動作を実行します。
- 観察(Observation):行動の結果を評価し、次の思考・行動に活かします。
このように、AIエージェントは人間のように「考える」と「行動する」を継続的に繰り返しながら、状況に応じて柔軟に判断し、より良い結果を導き出すことができます。特に、答えが一つではないような複雑なタスクや、途中で状況が変わりやすいタスクでは、この試行錯誤のプロセスがAIエージェントの成功率を大きく高めます。
AIエージェントの主な種類と活用事例

AIエージェントには様々なタイプが存在しますが、ここではビジネスにおいて理解しておくべき代表的な3つの種類と、それぞれの活用事例をご紹介します。導入目的や業務上のニーズに応じて、適切なエージェントを選定することが成功の鍵となります。
1. 目標ベース型エージェント
目標ベース型エージェントは、特定のゴールを明確に設定し、その達成に向けて最適な行動を計画・実行します。現在の状況と目標とのギャップを常に認識し、そのギャップを埋めるための行動を優先的に選択する点が特徴です。
企業の特定の課題解決やプロジェクト管理など、最終目的が明確なタスクにおいて特にその真価を発揮します。
【活用例】
- 営業支援システム
- これまでの顧客データから「成約率を○%向上させる」という目標を設定し、最適な顧客アプローチ計画の立案、提案資料の自動生成、次のアクションのリマインドなどをAIエージェントが考えて実行することで、効率的な営業活動と成果向上を支援します。
- 生産スケジューリング
- 「生産コストを〇%削減する」といった目標に対して、原材料の仕入れ状況、製造ラインの稼働状況、納期などの情報をもとに、最適な生産計画を自動で立案・調整し、無駄のない生産体制を実現します。
2. 学習エージェント
学習エージェントは、環境との継続的な相互作用を通じて、自ら学習しパフォーマンスを向上させていくエージェントです。
強化学習や深層学習といった技術を取り入れ、経験から「何が成功で、何が失敗か」を学び、次に取るべき行動をより賢く選択できるようになります。未知の状況や変化の激しい環境下でも、時間を追うごとに精度を高められる柔軟性が最大の特長と言えるでしょう。
【活用例】
- 自動運転システム
- 道路状況、他車の動き、交通標識などの情報から「安全かつ効率的に目的地に到達する」という目標に対し、走行経験を重ねるごとに危険予測や最適なルート選択の精度を向上させ、安全な移動をサポートします。
- パーソナライズされたレコメンデーション
- ユーザーの閲覧履歴や購入履歴、行動パターンを学習し、「ユーザーの満足度を最大化する」ことを目標に、そのユーザーに最適な商品やコンテンツを継続的に提案することで、顧客エンゲージメントの向上に貢献します。
3. マルチエージェントシステム
マルチエージェントシステムは、複数のAIエージェントが連携し、それぞれが特定の役割やタスクを分担しながら、より複雑な全体目標を達成するシステムです。各エージェントが独立して意思決定を行いながらも、情報共有や連携を通じて、並列処理や役割分担を実現します。
単一のエージェントでは対応が困難な、大規模かつ複雑なタスクや、動的に変化する環境下での運用に適しています。
【活用例】
- スマートシティ管理
- 交通流量を最適化するエージェント、エネルギー消費を管理するエージェント、公共安全を監視するエージェントなどが連携し、都市全体の効率と安全性を向上させ、持続可能な都市運営を支援します。
- サプライチェーン最適化
- 製造エージェント、在庫管理エージェント、配送エージェントなどが協力し、リアルタイムな情報にもとづいて生産から納品までのサプライチェーン全体を最適化することで、コスト削減やリードタイム短縮を図ります。
まとめ:自律的に行動するAIエージェント

AIエージェントは、従来のAIのように決められた作業をこなすだけでなく、自ら考えて判断し、最適な行動を選びながらタスクを遂行する新しいAI技術です。周囲の状況をモニタリングし、外部の情報やサービスも活用することで、より複雑で連続的なタスクに対応できます。
生成AIが特定の出力物の作成に特化しているのに対し、AIエージェントは「目的設定、計画立案、外部ツール・情報の活用、推論と実行の繰り返し」という一連のワークフローを通じて、目標達成のために柔軟に自らの行動を変化させます。
多様な分野で活用が期待されるAIエージェントは、企業が抱える課題を解決し、業務効率化や新たな価値創造を実現する上で、AIエージェントは重要な鍵となり、昨今の労働力不足を補填する一つの有効手段になりうるとも考えられます。
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