DX人材

リスキリングで何が変わる?注目される理由とメリットについて

2023年1月30日

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近年、様々な業種でリスキリングという言葉が飛び交っていますが「何をすればいいのかよく分からない」という声をよく聞きます。
この記事では、リスキリングの意味や、リスキリングが注目されるようになった背景について各国の取り組み事例を見ていくとともに、
導入の手順および課題について紹介していきます。

最近よく聞くリスキリングとは

リスキリングの定義

リスキリング(Reskilling)とは、Re(再び)+Skilling(技能を磨く)ことで、リスキル(Reskill)とも呼ばれます。
時代の変化とともに私たちに求められる技能も絶えず変化する中、企業が必要な技能を習得したりさせたりすることを指します。

リカレントとの違い

似たような言葉にリカレント(Recurrent)という言葉があり、「繰り返す」「循環する」といった意味があります。
リカレントでは、一度職を離れることが前提条件となり、大学等の教育機関で学びなおすことを指します。

スキルを習得するという点においてはリスキリングとの違いはありませんが、企業が従業員に対して目標を設定し、スキルの習得を促すことがリスキリング、自らが主体的となって新しいスキルを習得しようとするのがリカレントということになります。

なぜリスキリングが注目されるようになったのか

背景(1)新型コロナウイルス(COVID-19)の影響

新型コロナウイルスの影響を受けたことをきっかけとして、良くも悪くも人々の価値観や働き方は多様化しています。
自宅にいてもショッピングが楽しめるECサイトのニーズが高まったほか、テレワークが普及し、時間・場所に縛られることのない柔軟な働き方ができるようになりました。
それと同時に、従来のスキルだけでは対応しきれない業務が生まれたことで、必然的にリスキリングの認知度は高まっています。

背景(2)ダボス会議での「リスキリング宣言」

スイスのダボスでは毎年、ダボス会議と呼ばれる世界経済フォーラムを開催しています。
第4次産業革命によって、2025年までに約8,500万件の仕事が消失する一方で、新たに9,700万件の仕事が生まれることが予測されていることから、直近3年間のダボス会議では、リスキリング革命(Reskilling Revolution)と銘打ち、2030年までに全世界で10億人をリスキリングするとを宣言しました。

背景(3)SDGsの浸透 

SDGsへの関心の高まりも、リスキリングが推進されるようになった1つの要因といえます。
SDGsには17の目標があり、そのうちの8番目に「働きがいも経済成長も」が掲げられています。
すべての人が働きがいのある仕事に就き十分な収入を得ることを目標とし、需要が高まるデジタルスキルを習得させるために、リスキリングを導入する企業も増えてきています。

また、IT技術を使って環境への負担を軽減するグリーンITの関心も高まり、これと付随する目標が7番目の「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」や13番目の「気候変動に具体的な対策を」となります。
ガソリン車よりも環境にやさしいとされる電気自動車(EV車)の普及が進む中で、自動車会社で働く技術者たちは、電気制御やソフトウェア開発に対応するためにリスキリングしています。

図「国連が定めるSDGs17の目標」 引用:国際連合広報センター(https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_logo/)

 

各国のリスキリング推進策

アメリカ

アメリカでは、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた飲食店や小売店などが倒産し、従業員の解雇が相次いで発生しました。
これに伴い、リスキリングの新たなトレンド「アウトスキリング」という言葉も生まれました。
アウトスキリングとは、解雇などが理由で会社を去る予定の従業員に対して、デジタル分野をはじめとした成長産業のスキルを退職前に身に着けさせることで、新しいキャリア形成を支援することを指します。

フィンランド

世界トップの教育水準を誇るフィンランドでは、義務教育の期間を16歳から18歳までに引き上げました。
これまでは大学院まで授業料を無償としてきましたが、今後はさらに義務教育における教材や給食費なども無償となります。
国内の教育水準を底上げすることで「生涯学習」という考え方を浸透させ、全国民の高スキル人材化の実現を目指します。

日本

日本では、他の先進国に比べてDX化が遅れていることから、政府は国民一人ひとりのデジタルスキルの底上げに注力するとし、今後5年間で人への投資に対して1兆円を投じる見通しを示しています。

また経済産業省は2022年、デジタルスキルの向上と継続的にアップデートするための教育システムの構築について検討会を開催し、

・ DXリテラシー標準:全ビジネスパーソンが身に着けるべき能力・スキル
・ DX推進スキル標準:DXを推進する人材の役割や習得すべきスキル

上記2種類で構成されるデジタルスキル標準(DSS)を取りまとめました。
デジタルスキル標準は、特定の産業や職種に関する知識に偏らず、どのような企業・組織にも柔軟に取り入れられるようになっていることが特徴です。

図「デジタルスキル標準で対象とする人材」 引用:経済産業省(https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221221002/20221221002.html)

 

今だからこそ!日本でリスキリングが必要とされる理由  

理由その(1)  DXにより2030年までに330万人の雇用機会が失われるため

人材需給バランスの変化(2015年比) 引用:三菱総合研究所(https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20180806.html)


AIをはじめとするデジタル技術による自動化・無人化により、2030年までに約330万人の雇用機会が失われることが試算されています。
これはスキルのない求職者の働き口が無くなるというだけでなく、前時代的な会社は必要とされず淘汰されるということでもあります。
“時代遅れな人材(会社)”とならないためにもリスキリングが求められます。

理由その(2)  専門職とそれ以外の職種で「人材のミスマッチ」が発生するため

人材需給バランスの推移(職種別/2015年比) 引用:三菱総合研究所(https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/20180806.html)


デジタル化の影響を最も受けるとされる事務職と生産職では、2030年にあわせて約210万人の人材が過剰となるとされています。
一方、専門的なスキルが求められる専門職では、人材不足が顕著になるといわれていて、職種ごとの人材のミスマッチは拡大していくでしょう。
今後は過剰人材を抱えている職種にリスキリングを促し、不足分へ回すことでミスマッチをなくしていくことが必要と言えます。

このままだと日本の給与水準は上がらない!?鍵は非正規のリスキリング

日本でリスキリングが遅れる理由は「非正規」の働き方にある

ここまではリスキリングの必要性について話してきました。
他の先進国では、リスキリングを行うのはもはや常識と捉えられている国も多い中、なぜ日本ではリスキリングが浸透が遅れているのでしょうか?
その原因の1つに、日本に根付いた「非正規雇用」という働き方にあります。

国内企業のOJTおよびOFF-JTの実施状況 厚生労働省の令和3年度「能力開発基本調査」の結果を参考に作成 (https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00105.html)


2021年現在、正社員(正規社員)は約3,600万人なのに対し、パートやアルバイト、派遣社員といった非正規社員は約2,100万人います。
非正規は、女性や、バブル崩壊による就職氷河期の影響を受けた、いわゆるロスジェネ世代で多いとされています。

日本では、非正規雇用が雇用形態のボリュームゾーンを占めているにもかかわらず、教育への投資に消極的な企業も多く、簡単でコストの低い業務を充てられてきました。
企業がこうした働き方を容認してきた結果、非正規社員は就業年数が経過してもスキルを取得できず、正社員との間に大きなスキル格差が生まれました。

このままリスキリングが浸透しないとどうなるの?

OECD加盟諸国の単位時間当たりの労働生産性 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」を参考に作成 (https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/press_2022.pdf)


リスキリングが浸透しないと何が問題なの?と思う人もいるのではないでしょうか。
リスキリングが遅れた場合、考えられるシナリオの1つが「給与水準の低下」です。

日本人の労働生産性(※)は、約50年間にわたって主要先進7か国(G7)の中で最下位となっています。労働生産性が低いということは、言い換えると企業が成長できず、従業員の給与水準を上げたくても上げられないという状況になりかねません。
(※)労働者1人当たりで生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したもの。労働生産性が高いと、経済的な豊かな国であると判断できる。

新型コロナウイルスの影響に加え、物価高が従業員の生活に追い打ちをかける今だからこそ、
・従業員一人ひとりの意識変革を促す施策の実行
・従業員がリスキリングできるための社内体制の整備
することが企業にとって必要と言えるでしょう。

リスキリングを導入するには?まずはDX人材の確保を

ではどのようにリスキリングを社内へ導入すればいいのでしょうか。リスキリングには以下のようなステップを踏む必要があります。

(1) 経営戦略に沿って求めるDX人材像を明確化(対象者の選定、〇〇など)
(2)従業員のスキルを「見える化」し、求めるDX人材像とのギャップを把握
(3)教育プログラムの決定
(4)従業員に取り組んでもらう

冒頭でも話しましたが、リスキリングとは、DXによって変化する時代に対応するためにスキルをアップデートすることを指します。
リスキリングを導入するにあたって、求める人物像を設定するにしろ、教育プログラムを決定していくにしろ、DXに対してノウハウがない人が計画してしまうと、的外れな結果となりかねません。

リスキリング導入の前段階として、まずは一緒に奔走してくれるDX人材の採用からスタートしてみてはいかがでしょうか?
弊社ではDX人材の採用サポートをはじめ、リスキリングの鬼門と言われるスキルの見える化もサポートいたします。


まとめ

テクノロジーの進化に伴い、人々の取り巻く環境は大きく変わってきました。
スキルのアップデートは特定の従業員に行えば良いというわけではなく、正社員・非正規社員問わず従業員全体で底上げを図り意識改革を行わなければ、その効果は「その場しのぎ」もしくは「限定的」となりかねません。

リスキリングの導入を検討しているが、推進してくれるDX人材がいないという企業様は、ぜひ弊社のサービスを検討してみてください。

 

この記事を書いた人

ITコラム部YAZ

YAZ ITコラム部

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